不妊治療と「うつ」の現実 — 心と身体のクロスロード
2025/11/28
多くの不妊治療中の女性に、軽度〜中等度の抑うつ的な気持ちがみられる、という報告があります。治療を始める前――すでに「不妊」という事実そのものが心に重くのしかかる人もいますし、不妊治療によるホルモン変化、身体的・経済的・時間的な負担、将来への不安、周囲のプレッシャーなどが重なることで、心の息苦しさや絶望感が深まる人も少なくありません。
つまり、不妊そのものと、不妊治療というプロセス。どちらが原因か――あるいは両方か――は人によってさまざまですが、どちらにせよ「うつ」「抑うつ気分」は妊娠を望む心と身体のバランスにとって、マイナスになり得るのではないか、と思います。
どれくらいの人が「うつ」に近い気持ちになるのか?
近年の研究や調査では、次のような数字が報告されています:
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国際的なメタアナリシスでは、不妊女性における抑うつ症状の有病率(“うつっぽさ”)は、研究により 約 21%〜52% の幅。使用した測定方法により差が大きいものの、かなりの割合であることを示しています。
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さらに別の総合分析では、不妊女性全体での平均的な割合は 約 48.8%。
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ある国のクリニック調査では、不妊治療を受けている女性の 54% に治療開始初期の段階で「軽度以上の抑うつ症状」があった、という報告もあります。
これらのデータは、決して「少数派の例外」ではなく、「かなり多くの人が経験する可能性のあるもの」であることを示しています。
もちろん研究ごとに「抑うつ気分を測る尺度」「不妊の定義」「治療段階」「国や文化的背景」など条件が異なるため、一概に「不妊治療中の女性の半数はうつっぽい」と断言することはできません。ただ、「少なくとも数割、多ければ半数近く」という数字は、読者やその家族にとって“他人ごとではない現実”だと思います。
なぜ「うつ」は妊娠の妨げになりやすいか — 東洋医学的にも考える
東洋医学では、感情や精神の状態が「気・血・水」の巡りに強く影響するとされます。
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抑うつや不安、焦り、悲しみといったネガティブな感情は、「気」の流れを滞らせ、血行や代謝、ホルモンバランスにも影響を及ぼす可能性があります。
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身体的な治療のストレスやホルモン操作による負荷、そして精神的な重みが重なると、心身の統一感・調和が崩れやすくなる――つまり「妊娠しやすい状態(自然で無理のないバランス)」から遠ざかる懸念。
だからこそ、単に「治そう」「治さなければ」と構えすぎず、「まずは今の心の状態を受け止める」「“このくらいなら仕方ない”と自分を許す」「心が望むこと、心が喜ぶこと」を大切にする姿勢が、とても意味を持つと思います。
心が喜ぶ “ちょっとしたこと” を大切に — 無理せず、自分を癒すヒント
不妊治療中、あるいは不妊問題を抱えている人が、自分の心に優しくするためにできること――それは決して劇的なものである必要はなく、小さくても「心が少し軽くなる」ような行為。以下のようなものが考えられます:
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好きな香り、お気に入りのハーブティーを飲む、ゆっくり湯船に浸かる — 五感を使って「気持ちよさ」を感じる時間をつくる
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自然の中を散歩する、やわらかい音楽を聴く、本を読む、絵を見るなど、自分にとって心地よい時間を意識的に持つ
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パートナーや友人、専門家などに気持ちを話す ― 孤独やプレッシャーを一人で抱え込まないようにする
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東洋医学的なケア(例えば軽いマッサージ、鍼灸、ゆるめの運動や気功など)を、自分のペースで取り入れてみる
こうした「小さな喜び」や「心のケア」が、結果として“妊娠にとって好ましい、心身のバランス”を整える可能性がある、と思います。
“治す”ことに縛られすぎず — 自分のペースで、自分を大切に
「不妊 → うつ → 妊娠しにくい → また不妊 → さらに心が重く…」という負の連鎖は、どうしても起きやすいものです。でも「治す」「正常に戻す」という言葉に縛られず、まずは「いま心が感じていることを認める」「それを許す」「自分に優しくする」こと。これは“妊活”だけでなく、“自分を大切にする”という意味でも、とても大事だと思います。
そして、「心が喜ぶこと」を自分なりに見つけて、少しずつ、無理しすぎずに続けていく――そんなふうに過ごすことが、「妊娠を目的とした治療」だけでなく、「心と体の健康」を守る上でも、大きな味方になるのだと思います。
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