気の巡りを良くするという話があったでしょ

いいぞ。納めるべきところに納めつつ、気を巡らせることが大事だよ。津液・血も気の力で巡るんだ、だから気の巡りを良くすれば、津液も血も巡るようなる

具体的には、津液の巡りが良くなれば、浮腫み、湿疹、胃内停水など、血の巡りが良くなれば、生理痛、手足の冷え、瘀血性の痛み、または腫瘤などの症状が軽減するよ

そう。これらは気や津液、血の面から見た、太極拳を行うことで期待できる効果だね

他にも、五臓から見た効果効能もあるよ

では、まず心への影響からお話ししようか

中医学の心は、心臓としての働きと大脳として働きがあるよ。覚えてる？

心臓は血液を押し出す、それによって臓腑、筋肉、骨、皮膚など体の隅々まで酸素と栄養が届くんだね。心のポンプ作用が低下すれば、血の巡りが悪くなって酸素や栄養が届かない

そういうこと。それから心の大脳としての働きは、知覚、記憶、思考、意識、判断だね。だから心の調子が良ければ、一言で言えば「頭脳明晰」になる。夜も良く眠れるよ。人間は他の動物に比べて大脳がとても発達してるんだよ

そうだね。心は血脈をつかさどり、肝は肝気と共に蔵血をつかさどるんだ。蔵血とは、肝が血を一時的に蓄えるという意味。夜眠くなるのは、それまで体内をくまなく巡っていた血が肝に戻ってくるからなんだ。睡眠時や安静時に肝にしまわれていた血は、活動時には四肢体幹に還流する。肝の働きが安定していれば、血が頭に上り過ぎることもない。このように考えると、肝の「蔵血作用」とは、血液の配分作用であることがわかるね

だから肝血が不足すると四肢に力が入らなくなったりするね。また頭に血が昇って降りてこなければ頭痛、めまい、耳鳴りなどが起きるよ。逆に血が少なければ顔面蒼白や、血虚性のめまいが起きたり。先に話した通り、血も気の力によって巡るから、気が巡らなければ血も巡らない

そうだね。自律神経とホルモン分泌の中枢は、脳の中でも大脳ではなく間脳にある視床下部だよ

そう。ストレスを受けることで肝気が滞ると、肝気鬱滞となって、肝の発散の機能が阻害される。排卵障害などはここに起因すると考えられるんだ。また気の流れが悪くなることで瘀血が形成されると、この瘀血によって月経痛が引き起こされたりするよ。肝から心の流れも、心から肝の流れもあるよ

もちろん、ストレスは最初から受けない方がいいよ

脾の働きも良くなるよ

主に消化器の働きだね

脾は五行でいえば土でしょ

よく覚えているね。ちなみに肺は金で、腎は水だね。
脾はふつうは肝によって、働きを抑制されている、これを「木克土」というんだ。克は抑制するという意味だよ。木で作られた鍬（くわ）で土が耕されるということだね、わかる？

ストレスもなく、気持ちが落ち着いていれば食欲はふつうだよね。安定している

しかし強いストレスを受けると「木克土」が「木乗土」となって、食欲が無くなったり、お腹を壊したりする。これが「肝脾不和」という状態だね。

現代医学的病名で言えば、神経性胃炎とか、過敏性腸症候群などに当たるね。それからストレスによって一時的に食欲が増すこともある。やけ食いという奴だね

太極拳をやるとお肌の調子も良くなるよ

なる。五行でみれば、皮膚と関係が深いのは肺なんだ

肺は呼吸をするところだよね？皮膚も呼吸をしているでしょう？

太極拳をやって、営衛の巡りが良くなれば、血液循環も良くなってお肌もきれいになるよ

営気と衛気。主に臓腑の滋養を行うのが営気、皮膚表面で防衛の働きをするのが衛気。不眠のことろで出てきたよ

熱心だね

太極拳によって斎下丹田が充実することの説明は前に話した通り。丹田の充実は腎の充実といえるね。腎は体の最も深いところにあって、先天の精を蔵している。腎は生命力そのものだ

新しい生命を誕生させるには、まずは自分の腎をしっかりしたものにしないとね

太極拳は鍼灸のように、ツボを使い分けるなどの細かいことはできない。でも鍼灸治療を受けるベースとして太極拳をやれば、治療の効果もアップするよ。無理のない程度にぜひやってほしいと思う