馬込沢うえだ鍼灸院
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数値は目安、体は主役

2025/11/29

数値に一喜一憂することの功罪

前回は妊活において参考となる「数値」についてお話しました。

鍼灸の世界では、
体の変化は数値よりも「感覚」を大切にする
そう考えられてきました。

私自身も、本音を言えば、
数値的な評価が特別好きというわけではありません。

それでも、
数値で体を評価する世界が現実として存在する以上、
それを知らずに語ることも、無視することもできません。
だからこそ、ここまで数値の話をしてきました。

では、
数値を見ることは本当に良いことなのでしょうか。

 

プロ野球選手の世界に置き換えて考えてみる

たとえば、プロ野球選手。

野球が嫌いでプロになった人はいないでしょう。
誰もが、かつては野球がただ純粋に好きな「野球少年」だったはずです。

ところが、
野球でお金を稼ぐ立場になると、世界は一変します。

  • 打率

  • 打点

  • 本塁打数

  • 防御率

  • 勝ち星

  • 出塁率

プロの世界では、常に数字が付きまとい、
その数字は最終的に「お金」という形で評価されます。

数字は、良くも悪くもシビアです。
勝負の世界において、数字は欠かせません。

しかし、
その厳しさの中で、
**いつしか「野球が楽しくなくなる選手」**が生まれることもあります。

アマチュアであれば、
嫌になればやめることもできますし、
嫌な部分から距離を置くこともできます。

けれど、プロはそうはいきません。
なかには、プロであっても「辞める」という選択をする人がいるのも、
決して不思議なことではないのです。

 

では、妊娠において数字はどうでしょうか

妊活において数字を見るということは、
言い換えれば 「現実を見る」 ということです。

現実を知ること自体には、確かに意味があります。
一度は、数字の世界の現実を知っておくことも大切でしょう。

しかし、
その数字に とらわれすぎてしまうと、話は変わってきます。

  • 基礎体温を測ることがストレスになる

  • ホルモンの数値に一喜一憂して疲れてしまう

  • 検査結果が出るたびに、気持ちが上下する

これらはすべて
「子どもが欲しい」という切実な思いから起きることです。

けれど、
数字に振り回されることで心や体が疲れてしまっては、
「何のために妊活をしているのか」
分からなくなってしまいます。

 

数字は数字として、やることをやる

数字は、
あくまで 指標のひとつ にすぎません。

数字が良い日もあれば、
思うようにいかない日もあります。

それでも、

  • 自分の体が元気になっていくことがうれしい

  • 生活を整えること自体が心地よい

  • 妊活そのものが、どこか楽しい

そう感じられるようになると、
数字を見ることも、プラスに働くようになります。

 

妊活は、プロの世界ほどシビアではない

お金をもらっているプロ野球選手が、
数字で厳しく評価されるのは、ある意味で当然です。

しかし、
妊活は、そこまでシビアである必要はないはずです。

野球少年が、ただ野球を楽しいと感じていたように、
妊活もまた、
「生きること」「体を大切にすること」の延長線にあります。

毎日を丁寧に過ごすこと。
自分の体に目を向けること。
その積み重ねの中に、妊活があります。

数字は、見るべきときに見ればいい。
振り回される必要はありません。

純粋に、
妊活が、そして毎日が、少しでも楽しいと感じられること。

それが、何よりも大切なのではないでしょうか。

 

不妊症に悩む船橋市のあなたへ

卵子の質は変えられるのか?― AMHと加齢、そして「環境を整える」という考え方 ―

2025/11/29

卵子の“質”は変えられるのか?

妊活について語られるとき、「卵子の質」という言葉を耳にすることが多いかもしれません。
そして同時に、こんな疑問も浮かびやすくなります。

「卵子の質は上げられるの? それとも変えられないの?」

この問いに答えるためには、まず「質」という言葉が何を指しているのかを整理する必要があります。

■ 卵子の“質”は、生まれつき決まっている部分

卵子には、女性が生まれたときから備わっている「先天的な質」があります。
これはちょうど、人が生まれながらに持つ“才能”のようなものです。

  • 才能そのものは後から書き換えられない

  • しかし、その才能をどれだけ発揮できるかは環境によって大きく変わる

卵子も同じで、
生まれ持った質そのものを変えることはできません。
しかし、その卵子が 本来の力を発揮できるかどうかは、育つ環境に大きく左右されます。

 

■ 「質が下がる」と言われるのは、本来の意味とは少し違う

一般に「卵子の質は年齢で下がる」と言われます。
これは「生まれつきの質が変化している」という意味ではありません。

実際にはこうです。

  • 年齢とともに血流、代謝、ホルモンの働きなどの環境が変化し

  • 卵子がよい状態を保ちにくくなり

  • 結果として、受精や発育につながりにくくなる

つまり、低下するのは
“質そのもの”ではなく、“状態(コンディション)” なのです。

この状態は、生活環境やケアによって変わるため、
ここが私たちが介入できる部分になります。

 

■ AMHは「卵子の質」ではなく「卵子の数」の指標

AMH(アンチミュラー管ホルモン)は、卵子の残りの数を推測するための指標です。
質そのものとは関係がありません。

  • AMHが低くても自然妊娠する人はいる

  • AMHが高くても妊娠しにくい人もいる(例:多嚢胞性卵巣症候群)

ただし体外受精という観点で見れば、

AMHが高い → 採卵できる卵子が多い → 良い胚が得られる確率が上がる → 移植のチャンスが増える

というように、
“工程全体”を通じて妊娠の可能性が高まることは事実です。
つまり、AMHは 「間接的に」妊娠の確率に影響する と言えます。

 

■ 鍼灸はどこに関わるのか?

― 卵子が育つ「環境」を整える ―

鍼灸は、卵子の質そのものを変えることはできません。
また、卵子の数(AMH)を増やすこともできません。

しかし、鍼灸が関われる領域ははっきりしています。
それは、卵子が育ち、着床へ向かうための「環境」を整えることです。

卵子を植物にたとえるなら、
鍼灸は種そのものを変えることはできませんが、
土や水、日当たりを整えることはできる、という立場です。

 

■ 鍼灸によって期待できる「検査上の変化」

※ いずれも あくまで一般的な指標 であり、
※ 数値の改善が妊娠を保証するものではありません。

その前提を共有したうえで見ると、
体の状態がどう変化しているのかを、客観的に把握する手がかりになります。

● 子宮内膜の厚さ(経腟エコー)

もっとも分かりやすく、実感されやすい指標です。

鍼灸による血流改善や自律神経調整により、

  • 排卵期の子宮内膜が
    5~6mm程度 → 7~9mm前後

  • 毎周期「薄くて伸びない」と言われていた内膜が
    数周期かけて安定して厚みが出てくる

といった変化が、検査上確認されることがあります。

これは
子宮内膜が反応しやすい状態に整ってきたサイン
と捉えることができます。

● エストロゲン(E2)

エストロゲンは、子宮内膜の発育と密接に関係するホルモンです。

  • 卵胞期E2が
    50~80 pg/mL台 → 100 pg/mL前後まで立ち上がる

  • 「上がりにくい」「途中で止まる」傾向が和らぐ

といった変化が見られることがあります。

これは、
ホルモンを無理に増やしているのではなく、
分泌のリズムが整ってきた結果と考えられます。

● 黄体ホルモン(P4)

排卵後の環境を見る指標です。

  • 排卵後P4が
    8~9 ng/mL台 → 10 ng/mL以上で安定

  • 高温期が途中で下がりにくくなる

など、
黄体期の安定性が数値として現れることがあります。

● 基礎体温

検査ではありませんが、
毎日の積み重ねから見える、非常に重要な「数値」です。

  • 高温期が
    9~10日 → 12~14日程度に安定

  • 低温期と高温期の差が
    0.2℃未満 → 0.3℃以上

といった変化が見られることがあります。

これは、
自律神経やホルモンのリズムが整ってきたサインとも言えます。

● 月経の状態(半定量的な指標)

数値そのものではありませんが、
状態の変化として把握しやすい指標です。

  • 月経期間が
    2~3日で終わっていた → 4~5日程度に安定

  • 極端に少ない経血量や、強い塊感が和らぐ

といった変化が見られることがあります。

● FSH(補足的指標)

卵胞期FSHが、

  • やや高め → 基準範囲内に近づく

といった形で落ち着くことがあります。

ただしこれは
年齢や卵巣予備能の影響が大きいため、
単独で妊娠力を判断するものではありません

 

■ 数値は「結果」ではなく「途中経過」

これらの数値が改善したからといって、
必ず妊娠に至るわけではありません。

しかし、

  • 内膜が育ちやすくなる

  • ホルモンの波が安定する

  • 排卵から月経までの流れが整う

ことで、
妊娠に向かいやすい土台ができていくことは確かです。

学校のテストの点数が、その人のすべてを決めないように、
これらの数値もまた、
体の状態を知るための「一つの指標」にすぎません。

それでも、
体が良い方向に向かっているサインが見えることは、
妊活を続けるうえで大きな支えになります。

 

■ まとめ

  • 卵子の先天的な質や数は変えられない

  • しかし、卵子が育つ環境は整えられる

  • 鍼灸は、その「環境づくり」を支える

  • 数値はあくまで指標だが、無視するものでもない

  • 変化が見えることは、体が応答している証拠でもある

この「変えられる部分」を丁寧に整えていくこと。
それこそが、東洋医学と鍼灸が最も力を発揮する領域です。

不妊症に悩む船橋市のあなたへ

妊娠率を左右するのは「摂る」よりも「控える」?

2025/11/29

妊活をしていると、「これを食べたらいいかな」「このサプリを飲めば妊娠しやすいかも」と思うこと、ありますよね。でも、実際のところ、何かを摂ったからといって必ず妊娠できるわけではありません。サプリを飲んでも、卵子や精子に良い食事をしても、それだけで妊娠が決まることは少ないのです。

それよりも注目したいのは、控えることで妊娠しやすさに影響すること

例えば、

  • タバコやアルコールの過剰摂取

  • 極端な体重の増減

  • 脂っこい食事や加工食品の多用

  • カフェインの摂りすぎ

こうしたことは、卵子や精子の質、ホルモンバランス、子宮の環境に影響して、妊娠の可能性を下げてしまうことがあります。

最近では乳製品の摂りすぎにも注意が必要です。研究によると、乳製品をたくさん摂ると子宮内膜症のリスクが高まることがわかっています。子宮内膜症があっても妊娠できる人はいますが、妊娠に関わる一因になることもあります。つまり、間接的に妊娠率を下げる可能性があるわけです。

妊活って、つい「何かを足すこと」に目が行きがちですが、実はまず控えること、避けることが、体を整えるうえでとても大切。ちょっとした生活の工夫で、妊娠しやすい体づくりにつながります。

無理に頑張りすぎず、自分の体と生活を少し整える。それだけでも、妊活はずいぶん自然に、気持ちもラクに進められるかもしれませんね。

不妊症に悩む船橋市のあなたへ

不妊治療と自然妊娠、どれくらい差があるの?

2025/11/29

以下の様な報告があります。不妊治療を受けた人の中で、どれくらい妊娠できるのかを知りたい人は多いと思います。以下の様な報告があります。不妊治療経験者 199 人のうち、治療中に妊娠した人は約 46%、治療を中断した人のうちその後自然妊娠した人は約 33% でした。

※University College London(UCL)の研究チームによるもので、2023年に報道。背景として、1980年〜2021年までに世界で報告された11件の研究(合計5,000人以上)をまとめたメタ分析の結果。

この数字から見えることは、医療によって妊娠の可能性は高まるものの、治療を受けずに自然妊娠する人も少なくないことがわかります。治療で妊娠した人の中にも、自然に妊娠できた可能性のある人が含まれることを考えると、その差は意外と少ないという印象です。
つまり、不妊治療は「妊娠の確率を高める手段」として有効ですが、絶対に必要なものではなく、自然に妊娠できる力も残っていることを忘れないでほしいのです。

不妊症でお悩みの船橋市のあなたへ

不妊治療とうつ症状、そして睡眠の関係について

2025/11/29

不妊治療に取り組む人の多くに、抑うつ症状がみられることは、国内外の研究で繰り返し報告されています。うつ病の代表的な症状には、気分の落ち込みや意欲低下に加えて、「睡眠障害(入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒など)」が含まれます。この点を踏まえれば、不妊治療中の相当数の方が、程度の差こそあれ睡眠の質の低下を抱えていると推察することは、決して不自然ではありません。

実際、不妊治療中の睡眠の質について、詳細な統計は必ずしも十分とはいえません。しかし、“逆説的に”次のような訴えは非常に多い印象があります。
「よく眠れるようになったら、気持ちが軽くなった」「睡眠が整ったら、自然と前向きになれた」
といった声です。

不妊治療中に生じるうつ症状を根本的に改善する最大の要因は、言うまでもなく「妊娠が成立すること」です。しかし、現実には、それがいつ訪れるかは誰にもわかりませんし、治療の過程そのものがストレスの要因となりえます。

そのため、**妊娠の成立とは独立して“今この瞬間にできること”として、最も現実的で、影響が大きいと考えられるものの一つが「睡眠の充実」**です。睡眠は、気分・自律神経・ホルモンバランスの調整に深く関わるため、治療中の心身の安定を保つうえで、極めて重要な意味を持ちます。

直接的な妊娠率を上げるかどうかはともかく、
「良い睡眠を確保することは、不妊治療中のメンタルヘルスを支える中心的な柱になりうる」
という点については、臨床的視点からも大いに妥当であると言えます。

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