馬込沢うえだ鍼灸院
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月経痛

2023/12/31

月経痛(げっけいつう)は、月経(生理)の前後や期間中に下腹部や腰に痛みを感じる症状のことです。痛みの程度には個人差があり、軽い鈍痛程度で済む方もいれば、鎮痛薬を手放せないほど強い痛みに悩まされる方もいます。

現代医学的には、子宮内膜から分泌される「プロスタグランジン」という物質が子宮を強く収縮させ、血流を一時的に悪くすることで痛みが生じるとされています。また、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患によって起こる場合もあります。

一方、**東洋医学では月経痛を「気血の流れが滞った状態」**と考えます。
「気(き)」とは、体を動かすエネルギーであり、「血(けつ)」は全身を巡る栄養物質です。
この二つがスムーズに巡っていれば、月経も順調に行われますが、どちらかが滞ると痛みや不調が現れやすくなります。

とくに東洋医学では、月経痛の主な原因を以下のように捉えます。

① 気滞(きたい)
ストレスや感情の抑圧により「気」の流れが滞るタイプ。
特徴:張るような痛み、胸や脇のつかえ、ため息が多い。
→「気」の巡りを良くすることで痛みが和らぎます。

② 血瘀(けつお)
「血」の流れが悪く、子宮の中に滞りがあるタイプ。
特徴:刺すような痛み、経血に血の塊、色が黒っぽい。
→血の巡りを整え、滞りを取り除くことが大切です。

③ 寒凝(かんぎょう)
体の「冷え」が原因で気血の流れが悪くなったタイプ。
特徴:冷えると痛みが強くなる、温めると楽になる。
→体を温めることで子宮の働きを取り戻します。

④ 気血両虚(きけつりょうきょ)
慢性的な疲労や過労、食事の偏りなどで気血が不足したタイプ。
特徴:痛みは軽めだが長引く、倦怠感や顔色の悪さを伴う。
→「補う」ことで体のバランスを整えます。

このように、東洋医学では痛みそのものだけでなく、体全体の状態(体質)や生活の背景を見ていくのが特徴です。
そのため、同じ「月経痛」でも人によって治療方針は異なります。

鍼灸では、ツボを使って「気血の流れ」を整え、体を内側から温めることで子宮の働きを改善していきます。結果として、月経痛の軽減だけでなく、ホルモンバランスの安定や冷え・不妊の改善にもつながることがあります。

症例:月経痛も軽減、妊娠することができた
症例:月経痛が軽くなり、妊娠に至る

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多膿疱性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)

2023/12/31

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵がうまく起こらなくなるホルモンのアンバランスによる病気です。
卵巣の中に多数の小さな卵胞(卵のもと)が見られることから「多嚢胞性」と呼ばれます。

日本では女性のおよそ5〜8%程度がこの症候群に該当するとされ、月経不順や不妊の原因の一つとして知られています。

🐟主な症状

・月経が不規則、または無月経
・排卵が起こらない、もしくは稀にしか起こらない
・不妊(排卵障害による)
・男性ホルモンの増加による多毛(体毛が濃くなる)やニキビ
・体重増加、インスリン抵抗性(糖代謝異常)

これらの症状は人によって差があり、「月経不順だけで気づく人」もいれば、「ニキビや体重増加がきっかけで発見される人」もいます。

⚖️ 原因

PCOSの原因は一つではなく、以下のような要因が複雑に関係すると考えられています。

・ホルモンバランスの乱れ(特にLHとFSHの比の異常)
・インスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンが効きにくくなる)
・遺伝的要因や体質
・ストレスや生活習慣の乱れ

🌿 東洋医学からみた多嚢胞性卵巣症候群

東洋医学では、PCOSを**「気血の巡りが滞り、痰湿(たんしつ)が溜まった状態」**と捉えます。
これは、体内の水分や老廃物がうまく代謝されず、卵巣周囲に滞ってしまうことで、排卵やホルモンの働きを妨げると考えられます。

🖋  主なタイプと特徴

① 痰湿阻滞(たんしつそたい)タイプ
体の中に余分な湿気や老廃物がたまり、気血の巡りを妨げている状態。
特徴:体が重い、むくみ、白いおりものが多い、体重が増えやすい。
→ 体内の「湿」を取り除き、代謝を促す治療を行います。

② 肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
ストレスや感情の抑圧で「気」の流れが滞り、ホルモンの働きが乱れる。
特徴:月経不順、胸の張り、ため息が多い、イライラ。
→ 「気」の巡りを整え、ホルモンバランスを安定させます。

③ 腎虚(じんきょ)タイプ
生まれつき体力が弱い、または慢性的な疲労・冷えがあるタイプ。
特徴:冷え、不妊、疲れやすい、腰や膝がだるい。
→ 「腎」を補ってホルモンの働きを支える治療を行います。

☯  鍼灸・漢方のアプローチ

・鍼灸では、卵巣や子宮周辺の血流を改善し、排卵を促すことを目的とします。
・漢方では、「痰湿」や「瘀血」を取り除く処方(温胆湯、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など)を体質に合わせて用います。

これらの治療により、月経周期の改善や排卵の回復、不妊治療の補助として効果が見られることがあります。

💡 まとめ

多嚢胞性卵巣症候群は、ホルモンと代謝のバランスが関係する全身的な症候群です。
治療は薬(排卵誘発剤・ホルモン療法)だけでなく、体質改善や生活習慣の見直しが非常に重要です。
東洋医学では、心身の調和を整えることで、根本的な改善を目指します。

症例:多膿疱性卵巣症候群といわれたが妊娠した

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高プロラクチン血症とは — 概要と不妊との関係

2023/12/31

高プロラクチン血症とは、女性ホルモンの一種である プロラクチン(PRL)が、妊娠・授乳期以外でも異常に高く分泌される状態を指します。授乳時には自然に増えるホルモンですが、それ以外の時期で高値のままだと、月経不順・無排卵・排卵障害などを引き起こし、不妊につながることがあります。

プロラクチンが高い状態が長く続くと、黄体機能が弱まり、受精卵の着床や維持が困難になることもあるため、不妊の重要な原因のひとつです。

 

主な原因

高プロラクチン血症の原因としては、以下のようなものがあります。原因によっては治療や対策が異なるため、正確な診断が重要です。

  • 下垂体の腫瘍(プロラクチノーマ)や下垂体/視床下部の病変
    — プロラクチンを異常分泌する病的な変化。

  • 薬剤性
    — 抗精神病薬、向精神薬、制吐薬、降圧薬、胃腸薬など、特定の薬の副作用でプロラクチンが上がる場合がある。

  • ホルモンバランスの乱れ
    — 特に 甲状腺機能低下症 のような甲状腺疾患、ストレス、生活習慣の乱れなどによって引き起こされることが多い

  • 生理的・体質的な要因
    — 遺伝、体格、体質(ストレスの受けやすさなど)が影響する場合もある。


高プロラクチン血症が不妊に与える影響

  • 排卵が抑えられたり不規則になったりする → 排卵障害・無排卵

  • 月経異常や無月経

  • 黄体機能不全 → 着床しにくくなる、妊娠維持が難しくなる

  • 着床環境の悪化、不妊となるリスク上昇

このように、高プロラクチン血症は 妊娠成立のためのクリティカルなプロセス(排卵〜着床) に広く影響を及ぼします。


どれくらいの人に見られるか — 見つかる頻度の目安

さまざまな研究がありますが、不妊で検査を受けた女性のなかで高プロラクチン血症がみつかる割合はおおよそ次のように報告されています:

  • 15.7%(あるクリニックでの 1,163 人中) 

  • 24.7%(300 人の不妊女性の調査) 

  • 他の研究では 30〜40% という報告もあります。

このように、不妊女性のなかで「かなり多く」の割合で高プロラクチン血症がみつかる可能性がある というのが、現在の臨床実感および報告の平均値です。


高プロラクチン血症が疑われたら — チェックと対応のポイント

  1. 血液検査(プロラクチン測定)
     月経異常、不妊、乳汁分泌などがある場合はまず測定。プロラクチンは時間帯やストレスで変動しやすいため、複数回確認することが望ましい。

  2. 原因の特定
     下垂体腫瘍、甲状腺機能、服用薬の有無など、可能性のある原因を総合的に調べる。

  3. 必要に応じた治療
     ドーパミン作動薬などでプロラクチンを正常化する治療が一般的。治療によって排卵が戻り、妊娠する人も多い。

  4. 生活習慣の見直し
     ストレス管理、睡眠、適度な運動、バランスの良い食事など。薬剤やホルモン以外の原因への配慮も大切。


📝 結論

高プロラクチン血症は、不妊原因として 決して珍しくなく、むしろ比較的 “よく見つかる” 重要な因子 です。
排卵・月経・着床・ホルモンバランスすべてに影響するため、検査リストの最初に入れるべき疾患の一つとされています。検査・診断が早ければ治療で改善される可能性が高いため、不妊治療を考えている人には必ず確認してほしい状態です。

高プロラクチン血症の原因には、下垂体の腫瘍が関わる場合があります。ただし、これらの腫瘍のほとんどは良性で、プロラクチノーマもまず良性と考えて差し支えありません。悪性(下垂体がん)は全体のごく一部、0.1〜0.2%以下と非常にまれで、不妊症の検査をきっかけに見つかるケースが悪性である可能性はほとんどありません。過度に心配する必要はありませんので、まずは落ち着いて検査や治療を進めていただければと思います。

不妊症で悩む船橋市のあなたへ

患者様の声

2023/12/31

当院で治療をお受けになられた方から、お声をいただいております。


🌱30代・妊活中

「鍼灸を受けてから、体が整って気持ちも前向きになれました」


🌱40代・仕事と妊活両立

「通院することで不安が軽くなり、生活リズムも整いました」


🌱20代・初めての妊活

「リラックスできる時間が増えて、心も体も軽くなった気がします」


🌱30代・体質改善希望

「定期的に通うことで、冷えや疲れが減り、体調が安定してきました」


🌱40代・治療再開

「施術中に先生の声かけで安心でき、気持ちが前向きになれました」


🌱30代・不妊治療併用

「日常生活でも疲れにくくなった気がします」


🌱30代・体調を調える
「肩こりと冷え症が楽になりました」


🌱30代・仕事が充実
「鍼灸を始めてから、集中力が増した気がします」

 

FAQ よくある質問

2023/12/31

Q1. どれくらい通えば効果が出ますか?

A. 体質改善には時間がかかるため、週1回の施術を3か月ほど続けると変化を感じる方が多いです。
妊娠に至るまでは、
年齢・体質・食事・ストレス・睡眠 などが深く影響します。
特に、毎食何を食べるかは非常に重要で、妊娠力に直結します。

※私は医師ではありません。本FAQは、不妊に関する一般的な医学情報と東洋医学の視点をもとにまとめたものです。具体的な治療方針については、必ず担当医とご相談ください。


Q2. 西洋医学の治療(タイミング法・人工授精・体外受精)と併用できますか?

A. 併用できます。多くの方が同時に進めています。
目的としては、

  • 卵子の質を整えたい

  • 内膜環境をよくしたい

  • ホルモン治療の負担を軽減したい

などがあり、東洋医学がサポートしやすい部分です。


Q3. どのタイミングで来院するのがベストですか?

A. 生理周期に合わせた施術が理想的ですが、

  • 生理不順で周期が安定しない方

  • 周期は安定していても、仕事・家庭の事情で周期に合わせた来院が難しい方

は非常に多くいらっしゃいます。
その場合でも、現在の状態に合わせて施術を行い、可能な範囲で周期に寄り添いますのでご安心ください。


Q4. 痛みはありますか?

A. 鍼は非常に細く、痛みはほとんどありません。
灸も温かくて心地よい刺激です。リラックスして受けていただけます。


Q5. 年齢が高いのですが、それでも通った方がいいですか?

A. はい。年齢は妊娠に影響しますが、

  • 血流

  • 自律神経

  • 卵巣・子宮の環境
    は、年齢に関わらず整えることができます。
    40代で妊娠された例もございます。


Q6. 夫(男性側)の問題にも対応できますか?

A. 可能です。男性不妊の背景として、

  • 食生活

  • ストレス

  • 睡眠不足

  • 冷え

  • 腎(精のエネルギー)の弱り
    などが関係しています。
    施術と生活指導で全体の状態を整えていきます。


Q7. 病院で「原因不明」と言われました。それでも改善しますか?

A. むしろ、原因がはっきりしない方こそ鍼灸の対象になります。
東洋医学では、

  • 気血の不足

  • 冷え

  • 血流の滞り

  • ストレスや自律神経の乱れ
    といった“検査では出にくい体質的な問題”にアプローチします。

逆に、卵管閉塞など原因が明確な場合は、鍼灸だけでの改善は難しい場合があります。


Q8. どんな服装で行けばいいですか?

A. 専用の患者着を用意してございます。

Q9. 生理中でも施術を受けられますか?

A. 受けられます。生理痛がある方は、生理中の施術がむしろ役立つ場合があります。

Q10. 自宅でできるセルフケアはありますか?

A. はい。

  • 体(とくに下腹部と腰)を冷やさないこと

  • 軽いストレッチ

  • 深い呼吸・瞑想

  • 睡眠の質を上げる工夫

  • 食事で血とエネルギーを養う
    など、体質に合わせた具体的なアドバイスをお伝えします。

Q11. 妊娠後も通った方がいいですか?

A. 妊娠が判明した後は、まず担当医の指示が最優先 です。
とくに 妊娠3ヶ月(12週)までは慎重期間 とされ、
鍼灸の刺激が負担となる可能性もあるため、施術は控える場合があります。

安定期に入り、医師から問題なしとされた場合には、

  • つわり

  • 腰痛

  • 不安の緩和
    などの目的で施術を再開することが可能です。

Q12.妊娠において食事は大事ですか?

A.とても大事です。
食べることは、妊娠に向けて体を整えるうえで欠かせません。

人によって食べる物や食べ方の習慣はさまざまですが、「自分ではしっかり食べているつもり」でも、実際には必要な栄養が足りていないことがよくあります。

偏った食事でも妊娠する人はいますが、妊娠を本気で考えるなら、まず見直すべきは食事だといえます。

Q13.どんな食事が良いですか?

A.妊娠に向けては、
炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルをバランスよく摂ることが基本です。

日本人にとっては、日本食をベースにした食事の方が体に合いやすいといわれています。

一方で、戦後から急に増えた

  • 脂っこい物

  • 乳製品

  • 甘い物
    などは、さまざまな病気との関連が指摘されており、女性の体の不調や不妊とも関係すると考えられています。

また、体を冷やす冷たい飲み物・食べ物は控えると良いでしょう。

まずは、「体が喜ぶ食事とは何か」を意識するところから始めてみてください。

Q14.葉酸のサプリメントは飲んだ方が良いですか?

A.妊娠を希望する方にとって、最も大切なのは毎日の食事です。

葉酸は、ほうれん草・ブロッコリー・納豆など、身近な食品にも含まれています。
しっかり食事が摂れていれば、基本的にはサプリメントは必須ではありません。

ただし、葉酸の不足が心配な場合、サプリを補助的に使うこと自体は問題ありません
とはいえ、サプリだけで妊娠しやすくなるわけではありませんので、
あくまでも “食事が第一、サプリは補助” の姿勢が大切です。

  •  

Q15. ストレスは妊娠に影響しますか?

A. 影響します。強いストレスは、

  • 自律神経

  • ホルモンバランス

  • 血流
    に作用し、排卵や子宮環境にも影響することがあります。
    ただ、「ストレスをなくす」のではなく、体の状態を整えることでストレスに強くなるというのが東洋医学の考え方です。


Q16. どれくらいで体が変わったと実感できますか?

A. 個人差はありますが、

  • 冷えが軽くなる

  • 生理痛が和らぐ

  • 眠りが深くなる
    などの変化は、早い方で数週間〜1か月ほどで実感されます。
    妊娠しやすい体づくりは積み重ねが大切です。


Q17. 食事はどこまで厳密に守ればいいですか?

A. 完璧を目指す必要はありません。
ただし、妊娠を本気で望むなら、妊娠に向かない食品を毎日食べ続けるのは避けたほうが良いというのが基本です。
“できる範囲で、しかし確実に変える”ことが大切です。


Q18. サプリ・漢方・整体・ヨガなど他の健康法は必要ですか?

A. 必須ではありません。
まずは食事・睡眠・冷え対策などの体の基本を整えることが最重要です。
そのうえで、必要だと感じた場合にのみ取り入れると良いでしょう。


Q19. 鍼灸はどんな人に向いていますか?

A.
妊活において鍼灸は、”からだのベースを整える” ことを最も得意とします。
次のような方に特に向いています。

生理周期が安定しない方
排卵のタイミングが読みづらい、周期が長い・短いなど。

冷えを感じやすい方
手足の冷えだけでなく、お腹・腰の冷えがある方。
(子宮・卵巣の血流とも関係します)

PMS(月経前症候群)がつらい方
イライラ・落ち込み・頭痛・むくみなどが強い場合。

ストレスが多い・緊張しやすい方
自律神経の乱れはホルモンバランスにも影響します。

病院での治療だけでは不安がある方
タイミング法・人工授精・体外受精と併用し、
体質を整えながら妊娠しやすい状態に近づけたい方。

検査で大きな異常はないのに妊娠しづらい方
「原因不明不妊」では、血流・自律神経・気血のめぐりを整える鍼灸が相性の良いことがあります。

また、
疲れやすい・眠りが浅い・肩こりがひどい・胃腸が弱い
などの “一見、妊娠とは関係なさそうな不調” がある人ほど、
総合的に整える鍼灸が効果を発揮しやすい傾向があります。

Q20. 妊娠判明後、いつ再開できますか?

A. 安定期(12〜16週)以降で、医師から問題なしとされた場合、

  • つわり

  • 腰痛

  • 便秘

  • 不安
    などを目的に再開できます。

Q21.妊娠しやすい体質になることはできますか?

A. 結論として、「体質そのものを変えることはできません」。
しかし、生活習慣や治療によって体調を整えることで、妊娠の可能性を高めることは十分に可能です。

東洋医学では、両親から受け継いだ 先天の精(=体質) と、生まれた後の生活によって作られる 後天の精(=体調) を区別します。

「体質」=先天の精 → 変えられない

「体調」=後天の精 → 変えられる

妊娠力の基盤となる「腎精」は、この先天・後天から成り立っています。

したがって、

先天の部分は変えられないものの、
後天の精を養うことで腎精全体を底上げし、
妊娠しやすい“状態”には整えていくことができます。

■ ただし、年齢の影響は非常に大きい
後天の精を高めれば妊娠の可能性は上がりますが、
現代医学が示すように、女性の妊娠力は年齢によって大きく左右される のも事実です。

東洋医学でも、腎精は加齢とともに自然に減少するとされており、
これは卵子の加齢による妊娠率の低下と一致します。

つまり、
できる努力はある(後天の精の強化)
しかし年齢という現実も存在する(先天の精の消耗)
という両面を踏まえることが大切です。

Q22.老化した卵子を若返らせることはできますか? また、食事や生活習慣で卵子の質を良くすることはできますか?

A.結論から言えば、**「老化した卵子そのものを若返らせる方法はない」**という点で、現代医学・東洋医学ともに一致しています。
卵子は女性が生まれたときから卵巣内に存在し、年齢とともに数も質も低下していきます。すでに老化した卵子自体を若返らせる技術は存在しません。

しかし、ここで誤解してほしくないのは、
“これから育つ卵子の質”は生活習慣によって確実に変わる
という点です。

卵子は排卵される約3か月前から成長を始めます。この「育つ過程」は、血流・栄養・ホルモンバランス・自律神経・体温など、後天的な要素の影響を強く受けます。

● 悪しき生活を続けた場合

・偏った食事
・過度なストレス
・冷え
・睡眠不足
・慢性疲労
これらは卵子へ届く血流や栄養を妨げ、質の低下につながります。

● 養生を続けた場合

・バランスの取れた食事
・十分な睡眠
・血流を促す適度な運動
・身体を冷やさない生活
・ストレスのコントロール
これらを続けると、育ってくる卵子はより健やかな状態になります。

東洋医学では、これは「後天の精を補う」ことに相当します。後天の精(食べ物や呼吸から得るエネルギー)が満ちてくると、「腎精」を底上げすることが可能になり、結果として妊娠力の向上につながります。

さらに年齢の影響は避けられませんが、
年齢による低下を“後天の精”でどこまで補えるか
によって妊娠の可能性は大きく変わります。

◎ 結論
老化した卵子を若返らせる方法はありません。
しかし、食事・睡眠・運動・冷え対策などの生活習慣を整えることで、これから育つ卵子の質を良い方向へ変えることは十分に可能です。
東洋医学的には「後天の精」をしっかり補うことで「腎精」を底上げし、年齢による影響を補いながら妊娠の可能性を高めることができます。

Q23.生理があれば妊娠できますか?

A.結論から言えば、
「生理がある=必ず妊娠できる」ではありません。

まず知っておきたいのは、
“生理は、排卵がある時にも、排卵がない時にも起こりうる”
という事実です。

つまり、
出血があっても排卵がなければ妊娠はしません。


■ 生理のように見えるが、妊娠できないケース


① 年齢による卵巣機能低下(無排卵月経)

年齢が上がると排卵が不規則になり、
排卵が起きていないのに子宮内膜だけが剝がれて出血する
ことが増えてきます。
これは「無排卵月経」で、妊娠はできません。


② 閉経が近づいた時期(排卵は止まっているが出血は続く)

閉経とは、

“排卵が完全に止まった状態” を指し、
最後の出血から12か月間、生理が来なかった時点で確定します。「生理が止まる=閉経」ではなく、
排卵の終わりが本体です。

閉経が近づくと、
排卵はすでに止まっているのに、不規則な出血がしばらく続く
ことがあります。
この時期の出血は “生理のように見えるだけ” であり、妊娠はしません。


③ ホルモンバランスの乱れによる出血

ストレス・急激な体重変化・過度な運動などにより排卵が止まっていても、
子宮内膜が厚くなって剥がれ落ちること(不正出血)
があります。

これも生理ではなく、妊娠はできません。


結論

  • 出血があっても排卵がなければ妊娠はできない。

  • 年齢による卵巣機能低下や閉経前後には、
    排卵が止まっていても出血だけが続く時期がある。

  • つまり、
    「生理がある=排卵している」ではない。

  • 正確には、
    閉経とは“生理が止まること”ではなく、“排卵が完全に停止した状態”を指す。

そのため、閉経が近づいて排卵が止まった状態では、
たとえ出血があっても妊娠はできません。

Q24.日本と海外、不妊治療の進め方に違いはありますか?

A:あります。どちらが良い・悪いではなく、医療文化の違いとして理解すると分かりやすいです。
日本では、患者さんの意思決定が非常に強く尊重される傾向があり、そのため治療方針にも幅があります。医師から積極的な介入を提案されることもありますが、「まずタイミング法から」といったように段階を踏むケースも多いです。

いっぽう海外(特に欧米)では、学会が定めた明確なガイドラインに沿って治療が進む傾向が強く、年齢や検査結果によって早めに体外受精(IVF)へ移行することが一般的です。
たとえば「35歳を超えれば、一定期間で結果が出なければ積極的にIVFへ」など、年齢を最重視して治療を効率化する方針が多く見られます。

つまり、

日本=患者の意向が強く尊重される・柔軟性がある

海外=ガイドラインが強く機能し、効率的・合理的な選択が進む
という特徴があります。

妊娠という明確な目標を考えると「海外方式のほうが合理的」と感じる方もいるかもしれませんが、
「患者の意思とペース」を大切にする日本の進め方にも意義があります。
治療は“その人が納得して選べるかどうか”も大切なポイントです。

※私は医師ではありません。本FAQは、不妊に関する一般的な医学情報と東洋医学の視点をもとにまとめたものです。具体的な治療方針については、必ず担当医とご相談ください。

Q25.不妊の原因にはどんなものがありますか?

A.不妊の原因として次のようなものがあります。

【1】女性側:排卵の問題(排卵障害)

排卵が起こらない/起こりにくい状態で、不妊原因として最も多い領域です。
代表的なものは次の4つです。


多膿疱性卵巣症候群

  • 卵胞がたくさんできるが、排卵まで進みにくい

  • 月経不順になりやすい

  • 若い人にも多いタイプの排卵障害


高プロラクチン血症

  • 乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)が高い状態

  • プロラクチンは排卵を抑制するため、月経不順や無排卵の原因に


体重・ストレス・生活習慣による排卵停止(視床下部性無排卵)

  • 急な体重減少

  • 極端なダイエット

  • 過度な運動

  • 強いストレス

これらにより、脳(視床下部)からのホルモン指令が止まり、排卵が起こらなくなるタイプの無排卵。


甲状腺機能異常

  • 甲状腺機能低下症

  • 甲状腺機能亢進症

どちらの場合もホルモンバランスが乱れ、排卵が抑制され不妊につながる。


【2】女性側:卵管・子宮の問題

排卵は起きていても、受精や着床の妨げとなるものです。

  • 卵管の詰まり・通過障害(卵管因子)

  • 子宮内膜症

  • 子宮筋腫・ポリープ

  • 子宮腔の形の問題(癒着・中隔など)


【3】男性側の問題

不妊の約半数は男性側にも原因があります。

  • 精子の数が少ない(乏精子症)

  • 精子の運動率低下

  • 精子の形態異常

  • 精索静脈瘤による精子機能低下


【4】原因不明・機能性不妊(検査では見えにくいもの)

検査で「異常なし」と言われても妊娠しないケースは 全体の約3割 あります。

  • ホルモンの微妙な乱れ

  • 睡眠不足・冷え・血流低下

  • 強いストレスによる自律神経の乱れ

  • 子宮内膜の着床環境の問題(薄い・整っていないなど)


◎ まとめ(FAQ用の短縮版)

不妊の原因は、①排卵の問題(PCOS、高プロラクチン血症、体重・ストレス、甲状腺異常など)、②卵管・子宮の問題、③男性側の問題、④原因がはっきりしない機能的な問題の4つに大きく分けられます。
多くの場合、複数の要因が重なって起こります。

✦【東洋医学ではどう捉える?】

東洋医学では、不妊は「子宮だけ」「卵巣だけ」という局所ではなく、
全身のバランスの乱れの結果として起こると考えます。
特に以下の五臓が関わります。

① 腎(生殖の根本)

卵巣機能、ホルモン軸、月経・排卵の根本に関与

加齢・疲労・冷え・慢性ストレスで弱りやすい
▶ あらゆる不妊の中心に関わる臓。

② 脾(血をつくる臓)

食べ物を血に変え、子宮内膜を育てる

内膜が薄い、冷え・疲労、食欲低下などで低下しやすい
▶ 子宮内膜の厚さと最も関係が深い臓。

③ 肝(気血の巡り・ストレス調整)

自律神経・ホルモン指令のスムーズさ

ストレスで“肝気鬱結”となり排卵が乱れやすい
▶ 排卵障害・月経不順と深く関わる臓。

④ 心(精神・血流の中枢)

不眠、動悸、精神的ストレスの影響を受ける

心が弱ると気血が十分に巡らず、卵の質や内膜の育ちに影響
▶ 不妊ではしばしば“心の虚”が背景に存在する。

⑤ 肺(気を巡らせる)

気を作り全身に送り出す

気虚が強い人は、血の巡りが弱く子宮まで栄養が届かない
▶ 脾虚・疲労が強いタイプで補う必要がある。

✦まとめ
現代医学では「排卵」「着床」「卵巣年齢」「男性要因」などに分類されますが、
東洋医学では 脾・腎・肝を中心に、心と肺も含めた五臓全体の協調を重視します。

「どこか一箇所だけ治す」のではなく、
体の総合力を整えることで、自然な妊娠力を高めていく
というのが東洋医学的アプローチです。

Q26.不妊治療のストレスで妊娠しにくくなることはありますか?

A. はい、あります。

Q26. 不妊治療のストレスで妊娠しにくくなることはありますか?
A. はい、あります。

不妊治療は、体への負担だけでなく心にも大きな影響を与えます。たとえば、焦りや不安、通院や注射、薬の副作用などが重なると、身体のホルモンバランスや自律神経に影響を与え、排卵や着床がうまくいきにくくなることがあります。言い換えれば、**「不妊治療そのもののストレスが妊娠しにくさを生むこともある」ということです。また、「妊娠しないことへのストレス」**も、同様に心身に影響を及ぼす場合があります。

東洋医学では、こうしたストレスや身体の負担が「気や血のめぐり」を滞らせると考えます。そのため、鍼灸や漢方などで心身のバランスを整えるサポートを行うことで、妊娠に向けた体調づくりを助けることができます。

ただし、患者さんの状況によっては、これもまたストレスになってしまうことがあります。たとえば、

  • 通院や施術による体力的負担

  • 保険適用外であることによる金銭的負担

  • 「やらなければ」と思うことで生じる心理的負担

などです。そのため、東洋医学的なサポートも万能ではなく、無理のない範囲で取り入れ、その人の心身の余裕や生活状況に合わせることが大切です。

また、こうした背景から、ドクターの中には、不妊治療は長期戦にせず、効率的に行い、できるだけ短期間で妊娠につなげることを重視する方もいます。ストレスを最小限に抑えつつ妊娠の可能性を高めることが、治療を続ける上での重要な考え方の一つです。

Q27.不妊治療を受けると妊娠率はどのくらい上がりますか?

A. 以下のような報告があります。
不妊治療経験者 199 人のうち、治療中に妊娠した人は 45.7%(91 人)、治療を中断した人 54.3%(108 人)のうち、その後自然妊娠した人は 33.2%(66 人)でした。

※University College London(UCL)の研究チームによるもので、2023年に報道。背景として、1980年〜2021年までに世界で報告された11件の研究(合計5,000人以上)をまとめたメタ分析の結果。

この数字からわかることは、医療の手を借りることで妊娠の可能性は上がるものの、治療を受けなくても自然妊娠する人が意外と多いということです。治療で妊娠した人の中にも、もし治療を受けなければ自然に妊娠していた可能性のある方も含まれます。

つまり、不妊治療は妊娠の可能性を高める手段ではありますが、絶対的な方法ではないことを理解しておくことが大切です。

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