馬込沢うえだ鍼灸院
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ストレス性(視床下部性)不妊

2023/12/31

― なぜストレスによって不妊が起こるのか ―

前章でお話ししたように、女性ホルモンの分泌は「視床下部 → 下垂体 → 卵巣」という脳と卵巣の連携によってコントロールされています。
このうち最も上位にあり、全体のバランスを司っているのが**視床下部(ししょうかぶ)**です。

視床下部は、体温・睡眠・食欲・自律神経の働きなどを整える“体の司令塔”でもあります。
そのため、心身に強いストレスがかかると、真っ先に影響を受けやすい場所でもあるのです。

 

⚓ ストレスがホルモンのリズムを乱すしくみ
精神的なストレス(人間関係・仕事・プレッシャーなど)や、肉体的なストレス(過労・睡眠不足・過度な運動・急なダイエットなど)が続くと、視床下部の働きが鈍くなります。

すると、本来は視床下部が一定のリズムで出すはずの
**GnRH(卵胞刺激ホルモン放出ホルモン)**の分泌が不安定になります。

その結果、下垂体から分泌される
**FSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)**の分泌も乱れ、
卵巣に正しい指令が届かなくなってしまいます。

つまり、「脳が卵巣にうまく指示を出せない」状態になるのです。
そのため卵胞が十分に育たず、排卵が起こらない、月経が止まるといった症状が現れます。
これが、いわゆる視床下部性無月経(ししょうかぶせいむげつけい)やストレス性不妊です。

⚖️「心の負担」が「体の不調」として現れる
視床下部は「心」と「体」の境界にあるような存在で、精神的な不安や緊張をすぐに身体の反応として表します。
たとえば、強いストレスを感じると

月経が遅れる

排卵が止まる

基礎体温が安定しない
といった変化が起きるのは、まさにこのためです。

特に、真面目で頑張りすぎる人や、常に人のために動いてしまう人ほど、知らず知らずのうちにこの“脳の疲労”を溜めてしまいます。

🌿東洋医学から見るストレスと不妊
東洋医学では、このような状態を「気の滞り(気滞)」や「肝(かん)の失調」として捉えます。
「肝」は気血の流れや情緒の安定を司る臓とされ、ストレスによって肝の働きが乱れると、全身の気の流れが滞り、血のめぐり(血流)にも影響が及びます。

その結果、子宮や卵巣への血流も悪くなり、卵の育ちや着床の環境にも影響が出ると考えられています。
つまり、東洋医学的にも「ストレスが不妊の原因になる」という考えは、現代医学の視床下部性不妊と非常に通じるものがあるのです。

💡まとめ
ストレス性(視床下部性)不妊とは、心の緊張や疲労が脳の働きを乱し、ホルモンのバランスを崩してしまうことで起こる不妊の一種です。
「心と体はつながっている」ということを、科学的にも東洋医学的にも示す典型的な例といえます。

妊娠しやすい体づくりのためには、単にホルモンを整えるだけでなく、
心をゆるめ、安心できる時間を持つことがとても大切です。

症例:視床下部性不妊と思われたが妊娠することができた

症例:原因不明不妊期が続いたが妊娠した

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子宮内膜症

2023/12/31

子宮内膜症とは、本来子宮の内側にしか存在しないはずの「子宮内膜(しきゅうないまく)」という組織が、子宮の外側(卵巣や腹膜など)にできてしまう病気です。
この「迷い出た内膜組織」も月経周期に合わせて反応し、月経時に出血を起こすため、**強い痛みや炎症、癒着(ゆちゃく)**を引き起こします。

現代医学では、主な症状として以下が挙げられます。

・強い月経痛(回を重ねるごとに悪化することが多い)
・排便時や性交時の痛み
・不妊(卵管や卵巣の癒着による)
・慢性的な下腹部の重だるさ

原因はまだ完全には解明されていませんが、「月経血の逆流説」や「免疫異常説」などが有力です。

🌿 東洋医学からみた子宮内膜症

東洋医学では、子宮内膜症を**「気血の流れが滞り、瘀血(おけつ)が長く停滞した状態」**と捉えます。
「瘀血(おけつ)」とは、血の流れが悪くなり、体内に古い血が滞った状態を指します。
これが子宮周辺に生じることで、痛みやしこり、不妊といった症状が現れると考えます。

以下のようなタイプに分けて、体質や原因を見極めます。

① 気滞血瘀(きたいけつお)タイプ
ストレスや感情の抑圧が原因で「気」が滞り、それに伴って「血」も流れにくくなる状態。
特徴: 下腹部の刺すような痛み、経血に血塊、月経前から痛みが強まる、胸や脇の張り。
→ 「気」と「血」の巡りを促すことで、痛みや詰まりを緩和します。

② 寒凝血瘀(かんぎょうけつお)タイプ
体の「冷え」によって血流が悪くなり、瘀血を生じた状態。
特徴: 冷えると痛みが強くなる、温めると楽になる、経血が黒っぽく粘り気がある。
→ 体を内側から温めて血の流れを改善し、痛みを軽減します。

③ 気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ
慢性的な月経過多や出血、疲労などで「気」や「血」が不足した状態。
特徴: 鈍い痛み、倦怠感、顔色が悪い、めまい、冷え性。
→ 「補気」「補血」を中心に体の基礎力を整え、再発を防ぎます。

④ 湿熱瘀阻(しつねつおそ)タイプ
体内に余分な湿気や熱がこもり、血の流れを妨げている状態。
特徴: 下腹部の熱感、経血の色が濃く粘る、口の渇き、便秘ぎみ。
→ 「湿」と「熱」を取り除き、体内環境を清潔に整えることで改善を図ります。

☯ 鍼灸や漢方のアプローチ

鍼灸では、「気血の滞り」を解き、子宮や卵巣周辺の血流を促進することで、炎症・痛み・冷えの改善を目指します。
また、体全体のバランスを整えることで、ホルモン分泌や自律神経にも良い影響を与え、不妊や月経不順の改善にもつながることがあります。

漢方薬では、「血の滞り」を取る**活血化瘀(かっけつかお)**を中心に、体質に合わせた処方(桂枝茯苓丸・桃核承気湯・温経湯など)が選ばれます。

💡 まとめ

東洋医学では、子宮内膜症を「単なる病変」ではなく、心身のバランスの乱れが現れた状態として捉えます。
そのため、治療は「子宮だけ」でなく、「全身の巡りと調和」を回復することを目的としています。

治療方法は主に薬物療法となります。薬の効果をあまり感じられず、手術に至る人もいますが、手術後に再発するケースも少なくありません。
また、子宮内膜症は不妊の一因となることもあるため、早期からの適切な治療と体質改善の両立が大切です。

症例:子宮内膜症も冷えも良くなり、妊症した

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月経痛

2023/12/31

月経痛(げっけいつう)は、月経(生理)の前後や期間中に下腹部や腰に痛みを感じる症状のことです。痛みの程度には個人差があり、軽い鈍痛程度で済む方もいれば、鎮痛薬を手放せないほど強い痛みに悩まされる方もいます。

現代医学的には、子宮内膜から分泌される「プロスタグランジン」という物質が子宮を強く収縮させ、血流を一時的に悪くすることで痛みが生じるとされています。また、子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患によって起こる場合もあります。

一方、**東洋医学では月経痛を「気血の流れが滞った状態」**と考えます。
「気(き)」とは、体を動かすエネルギーであり、「血(けつ)」は全身を巡る栄養物質です。
この二つがスムーズに巡っていれば、月経も順調に行われますが、どちらかが滞ると痛みや不調が現れやすくなります。

とくに東洋医学では、月経痛の主な原因を以下のように捉えます。

① 気滞(きたい)
ストレスや感情の抑圧により「気」の流れが滞るタイプ。
特徴:張るような痛み、胸や脇のつかえ、ため息が多い。
→「気」の巡りを良くすることで痛みが和らぎます。

② 血瘀(けつお)
「血」の流れが悪く、子宮の中に滞りがあるタイプ。
特徴:刺すような痛み、経血に血の塊、色が黒っぽい。
→血の巡りを整え、滞りを取り除くことが大切です。

③ 寒凝(かんぎょう)
体の「冷え」が原因で気血の流れが悪くなったタイプ。
特徴:冷えると痛みが強くなる、温めると楽になる。
→体を温めることで子宮の働きを取り戻します。

④ 気血両虚(きけつりょうきょ)
慢性的な疲労や過労、食事の偏りなどで気血が不足したタイプ。
特徴:痛みは軽めだが長引く、倦怠感や顔色の悪さを伴う。
→「補う」ことで体のバランスを整えます。

このように、東洋医学では痛みそのものだけでなく、体全体の状態(体質)や生活の背景を見ていくのが特徴です。
そのため、同じ「月経痛」でも人によって治療方針は異なります。

鍼灸では、ツボを使って「気血の流れ」を整え、体を内側から温めることで子宮の働きを改善していきます。結果として、月経痛の軽減だけでなく、ホルモンバランスの安定や冷え・不妊の改善にもつながることがあります。

症例:月経痛も軽減、妊娠することができた
症例:月経痛が軽くなり、妊娠に至る

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多膿疱性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)

2023/12/31

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵がうまく起こらなくなるホルモンのアンバランスによる病気です。
卵巣の中に多数の小さな卵胞(卵のもと)が見られることから「多嚢胞性」と呼ばれます。

日本では女性のおよそ5〜8%程度がこの症候群に該当するとされ、月経不順や不妊の原因の一つとして知られています。

🐟主な症状

・月経が不規則、または無月経
・排卵が起こらない、もしくは稀にしか起こらない
・不妊(排卵障害による)
・男性ホルモンの増加による多毛(体毛が濃くなる)やニキビ
・体重増加、インスリン抵抗性(糖代謝異常)

これらの症状は人によって差があり、「月経不順だけで気づく人」もいれば、「ニキビや体重増加がきっかけで発見される人」もいます。

⚖️ 原因

PCOSの原因は一つではなく、以下のような要因が複雑に関係すると考えられています。

・ホルモンバランスの乱れ(特にLHとFSHの比の異常)
・インスリン抵抗性(血糖値を下げるホルモンが効きにくくなる)
・遺伝的要因や体質
・ストレスや生活習慣の乱れ

🌿 東洋医学からみた多嚢胞性卵巣症候群

東洋医学では、PCOSを**「気血の巡りが滞り、痰湿(たんしつ)が溜まった状態」**と捉えます。
これは、体内の水分や老廃物がうまく代謝されず、卵巣周囲に滞ってしまうことで、排卵やホルモンの働きを妨げると考えられます。

🖋  主なタイプと特徴

① 痰湿阻滞(たんしつそたい)タイプ
体の中に余分な湿気や老廃物がたまり、気血の巡りを妨げている状態。
特徴:体が重い、むくみ、白いおりものが多い、体重が増えやすい。
→ 体内の「湿」を取り除き、代謝を促す治療を行います。

② 肝鬱気滞(かんうつきたい)タイプ
ストレスや感情の抑圧で「気」の流れが滞り、ホルモンの働きが乱れる。
特徴:月経不順、胸の張り、ため息が多い、イライラ。
→ 「気」の巡りを整え、ホルモンバランスを安定させます。

③ 腎虚(じんきょ)タイプ
生まれつき体力が弱い、または慢性的な疲労・冷えがあるタイプ。
特徴:冷え、不妊、疲れやすい、腰や膝がだるい。
→ 「腎」を補ってホルモンの働きを支える治療を行います。

☯  鍼灸・漢方のアプローチ

・鍼灸では、卵巣や子宮周辺の血流を改善し、排卵を促すことを目的とします。
・漢方では、「痰湿」や「瘀血」を取り除く処方(温胆湯、加味逍遥散、桂枝茯苓丸など)を体質に合わせて用います。

これらの治療により、月経周期の改善や排卵の回復、不妊治療の補助として効果が見られることがあります。

💡 まとめ

多嚢胞性卵巣症候群は、ホルモンと代謝のバランスが関係する全身的な症候群です。
治療は薬(排卵誘発剤・ホルモン療法)だけでなく、体質改善や生活習慣の見直しが非常に重要です。
東洋医学では、心身の調和を整えることで、根本的な改善を目指します。

症例:多膿疱性卵巣症候群といわれたが妊娠した

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高プロラクチン血症とは — 概要と不妊との関係

2023/12/31

高プロラクチン血症とは、女性ホルモンの一種である プロラクチン(PRL)が、妊娠・授乳期以外でも異常に高く分泌される状態を指します。授乳時には自然に増えるホルモンですが、それ以外の時期で高値のままだと、月経不順・無排卵・排卵障害などを引き起こし、不妊につながることがあります。

プロラクチンが高い状態が長く続くと、黄体機能が弱まり、受精卵の着床や維持が困難になることもあるため、不妊の重要な原因のひとつです。

 

主な原因

高プロラクチン血症の原因としては、以下のようなものがあります。原因によっては治療や対策が異なるため、正確な診断が重要です。

  • 下垂体の腫瘍(プロラクチノーマ)や下垂体/視床下部の病変
    — プロラクチンを異常分泌する病的な変化。

  • 薬剤性
    — 抗精神病薬、向精神薬、制吐薬、降圧薬、胃腸薬など、特定の薬の副作用でプロラクチンが上がる場合がある。

  • ホルモンバランスの乱れ
    — 特に 甲状腺機能低下症 のような甲状腺疾患、ストレス、生活習慣の乱れなどによって引き起こされることが多い

  • 生理的・体質的な要因
    — 遺伝、体格、体質(ストレスの受けやすさなど)が影響する場合もある。


高プロラクチン血症が不妊に与える影響

  • 排卵が抑えられたり不規則になったりする → 排卵障害・無排卵

  • 月経異常や無月経

  • 黄体機能不全 → 着床しにくくなる、妊娠維持が難しくなる

  • 着床環境の悪化、不妊となるリスク上昇

このように、高プロラクチン血症は 妊娠成立のためのクリティカルなプロセス(排卵〜着床) に広く影響を及ぼします。


どれくらいの人に見られるか — 見つかる頻度の目安

さまざまな研究がありますが、不妊で検査を受けた女性のなかで高プロラクチン血症がみつかる割合はおおよそ次のように報告されています:

  • 15.7%(あるクリニックでの 1,163 人中) 

  • 24.7%(300 人の不妊女性の調査) 

  • 他の研究では 30〜40% という報告もあります。

このように、不妊女性のなかで「かなり多く」の割合で高プロラクチン血症がみつかる可能性がある というのが、現在の臨床実感および報告の平均値です。


高プロラクチン血症が疑われたら — チェックと対応のポイント

  1. 血液検査(プロラクチン測定)
     月経異常、不妊、乳汁分泌などがある場合はまず測定。プロラクチンは時間帯やストレスで変動しやすいため、複数回確認することが望ましい。

  2. 原因の特定
     下垂体腫瘍、甲状腺機能、服用薬の有無など、可能性のある原因を総合的に調べる。

  3. 必要に応じた治療
     ドーパミン作動薬などでプロラクチンを正常化する治療が一般的。治療によって排卵が戻り、妊娠する人も多い。

  4. 生活習慣の見直し
     ストレス管理、睡眠、適度な運動、バランスの良い食事など。薬剤やホルモン以外の原因への配慮も大切。


📝 結論

高プロラクチン血症は、不妊原因として 決して珍しくなく、むしろ比較的 “よく見つかる” 重要な因子 です。
排卵・月経・着床・ホルモンバランスすべてに影響するため、検査リストの最初に入れるべき疾患の一つとされています。検査・診断が早ければ治療で改善される可能性が高いため、不妊治療を考えている人には必ず確認してほしい状態です。

高プロラクチン血症の原因には、下垂体の腫瘍が関わる場合があります。ただし、これらの腫瘍のほとんどは良性で、プロラクチノーマもまず良性と考えて差し支えありません。悪性(下垂体がん)は全体のごく一部、0.1〜0.2%以下と非常にまれで、不妊症の検査をきっかけに見つかるケースが悪性である可能性はほとんどありません。過度に心配する必要はありませんので、まずは落ち着いて検査や治療を進めていただければと思います。

不妊症で悩む船橋市のあなたへ

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