東洋医学(中医学)について
2025/11/27
東洋医学(中医学)を理解するための基礎

○東洋医学とは
「東洋医学」とは、西洋医学に対して使われる包括的な言葉で、インドのアーユルヴェーダ、イスラム圏のユナニ医学、中国の中医学などが含まれます。
日本で一般的に「東洋医学」と言う場合は、主に中医学、あるいはその流れを汲んで日本で発展した漢方医学を指します。
○東洋医学の基本理念
東洋医学の根幹となる哲学には、主に陰陽論と五行論があります。両者を合わせて陰陽五行論と呼びます。
●陰陽論
すべての事象は「陰」と「陽」という二つの性質を併せ持つという考えです。
陰:暗・冷・静・内向・収縮・夕夜・秋冬・女性
陽:明・温・動・外向・拡散・朝昼・春夏・男性
健康とは、この陰陽の調和が保たれている状態を指します。
陰が不足すれば陰を補い、陽が不足すれば陽を補うことで、心身のバランスが整えられていきます。
●五行論
世界は木・火・土・金・水の五つの性質によって構成され、互いに助け合い、抑制し合うことでバランスを保つと考えます。
相生(生)の関係
木 → 火 → 土 → 金 → 水 → 木
相克(克)の関係
木 → 土 → 水 → 火 → 金 → 木
五臓(肝・心・脾・肺・腎)も五行に対応し、臓腑間の関係性を読み解く際に応用されます。
●気・血・津液
人体を巡る基礎的な生命物質です。
気:生命エネルギー
血:栄養を運ぶ血液
津液:体を潤す各種体液
これらが滞りなく巡ることが健康の基本です。
●経絡・経穴
経絡(経脈):気・血・津液の通り道
経穴(ツボ):診断や施術の要となるポイント
鍼灸治療はこれらを利用して全身の調和を整えます。
●証(しょう)
東洋医学では、病名ではなく**「証」=その人の体質と現在の状態**をもとに治療を行います。
同じ病名でも、体質・体力・症状が異なれば治療方針は大きく変わります。
これが東洋医学の「個別化医療」の特徴です。
●未病治療
東洋医学には古くから**「未病治(みびょうち)」**という重要な考え方があります。
これは、病気になる前の“病気の芽”を早めに摘み取ってしまうという予防哲学です。
症状はまだ軽い
病名はつかない
検査では異常が出ない
けれど不調を感じる
このような“未病”の段階で身体を整え、病気に至らせないことを重視します。
近年、現代医学でも予防医学が強調されるようになってはきましたが、西洋医学はもともと「病気が発生してからどう治すか」から出発した医学体系であり、未病という概念は歴史的には存在していませんでした。
私自身もこの事実を知ったとき驚いたのですが、現代医学は基本的に
「病気ありき」
の体系であり、不調の段階では「異常なし」とされてしまうことが多いのです。
その隙間を埋めてきたのが、古来の東洋医学の未病治療であるといえます。
○日本における東洋医学の歴史
日本では長く漢方医学が主医療でしたが、明治維新以後、西洋医学が国家の公式医学として採用されました。
当時は戦争による負傷や感染症など、西洋医学が特に得意とする分野が多数あったためです。
しかし現代では、
慢性の生活習慣病
ストレス疾患
不眠や自律神経の乱れ
原因不明の不調
といった、西洋医学が苦手とする慢性・未病領域が増えています。
このような背景から、東洋医学は「代替医療」という枠にとどまらず、補完医療として再評価されています。
もっといえば、患者本人から見れば東洋医学が“主たる医療”となるケースも珍しくありません。


























